研究概要 |
抗真菌抗生物質Pradimicin(PRM)の体内動態を改善するために、水溶性向上と自己凝集性の低下を狙った新規誘導体合成を試みた。その結果、PRMの第二糖であるキシロースを過ヨウ素酸ナトリウムでジオール開裂した後、生ずるジアルデヒドを酸化して2個のカルボキシル基を導入した誘導体PRM-DCA類が期待する物性を有することを見出した。PRM A、N,N-dimethyl-PRM C、BMY28864の3化合物を原料として、それぞれを誘導体化反応に供し、60〜75%の収率で誘導体を得た。PBS溶液に対する溶解度は親化合物に比較してPRM-A-DCAが約30倍、他2化合物は親化合物が高水溶性誘導体であるが更に約2倍向上した。また、PRM-DCA類のマンノースへの親和性をUVスペクトル変化により検証したところ、いずれも親化合物の20分の1程度に低下していた。マンナンとの凝集性は、PRM-A-DCAとNN-Me-PRM-C-DCAでは親化合物の5%以下に、BMY28864-DCAでは30%まで低下した。このようにキシロース残基を酸化分解によりジカルボキシル基に変換したPRM-DCA誘導体が高い水溶性と低い凝集性を有することを明らかにした。一方、いずれのPRM-DCA誘導体もCandida、Cryptococcus、Aspergillusに対して抗真菌活性を示し、中でもNN-Me-PRM-C-DCAは親化合物とほぼ同等のMICを示した。一方で、親化合物はHIVやインフルエンザウイルスなど表層に高マンノース糖鎖を有するウイルスに活性を示すが、DCA誘導体は全く活性を示さなかった。また、PRM-DCAのカルボキシル基を利用したプロドラッグ、ドラッグデリバリー用薬物の合成が可能であることを明らかにした。
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