レクチンは糖鎖を特異的に認識して結合する蛋白質であり、細胞表面糖鎖と特異的な結合能を有する。本研究では、我々が確立したレクチンの新規精製法で精製したウドレクチンがヒト結腸癌Caco-2細胞においてIL-8を上昇させることを明らかにしていたが、今回、その上流にあるTNFαおよびIL-1βの遺伝子発現に対する影響を調べた結果、これらを発現上昇させることが明らかになった。また、日本産ヤドリギレクチンもCaco-2細胞における遺伝子発現に対してウドレクチンと同様の作用を有することを明らかにした。IL-8は炎症を誘起するが、一方、その刺激に慢性的に曝されることで、炎症を浴終息し、免疫力が高まる可能性があり、ウド摂取が免疫機能維持に働く可能性がある。 次に、癌細胞アポトーシス誘導活性を有するレクチンについて検討した。多くの抗癌剤が癌細胞にアポトーシスを誘導することから、アポトーシス誘導活性を持つものには抗癌作用が期待される。日本産ヤドリギレクチンやクロカワレクチンがヒト白血病U937細胞にアポトーシスを誘導することを明らかにしていたが、今回、新しく分離したアイリスレクチンおよびムスカリレクチンがU937細胞にアポトーシスを誘導する活性があることを明らかにした。さらに、クロカワレクチンについては、ヒト胃癌MKN-45細胞やマウス肺癌LL2細胞にアポトーシスを誘導し、ヒト正常WI-38細胞とその癌化型のWI-38VA細胞への影響の比較では、正常細胞よりも癌化型細胞に強くアポトーシスを誘導することがわかった。 本研究の結果、ブタ血漿固定化セファロースを用いて有用なレクチンを簡便かつ安価に精製できることが確かめられた。また、得られたウド、クロカワ、ヤドリギのレクチンのin vitroでの生物活性を調べた結果、サイトカイン発現調節やアポトーシス誘導などについて有用な知見が得られた。
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