研究課題
血清中などに見出されるセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)において、組織への沈着や重篤な遺伝的分子異常の原因となるコンフォメーション変化;ループ挿入を制御抑制することを目的とし、その中間状態を解析する方法を開発し、これを利用してループ挿入の分子機構の解明に向けてタンパク質工学的アプローチを行った。研究対象として、セルピン・スーパーファミリーに分類されるものの、阻害活性を持たない卵白タンパク質;オボアルブミンに着目し、昨年度開発した定量的解析法を用いて、タンパク質工学的に作成した変異体タンパク質について、ループ挿入速度の解析を行った。いずれの変異体についても、酸性でループ挿入が速く、生理的な条件に近い中性付近で遅い傾向が見られた。酸性付近でのループ挿入速度が、本タンパク質が潜在的に持っているループ挿入能であり、酸性残基のカルボキシル基が中性付近で解離することにより、ループ挿入を妨げるようになるとの仮説の元に、pH依存性を解消させる目的で、3種のオボアルブミン変異体を作成した。これらの変異体について、ループ挿入速度のpH依存性を調べたところ、いずれもpH依存性は解消されておらず、今回調べた酸性残基単独では、ループ挿入のpH依存性を解消できないことが示された。今後の展開として、本タンパク質が酸性領域でモルテングロビュール構造を取ることを考慮し、分子の構造安定性とループ挿入の相関関係を解析することで、ループ挿入の中間状態と分子重合抑制の機構を見出すことができるものと考えられた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 69・5
ページ: 922-931
Journal of Molecular Biology 348・2
ページ: 409-418