研究課題
基盤研究(C)
我々はこれまでにBALB/cマウスにβ-カロテン(以下BC)と高用量のα-トコフェロール(以下AT)を組み合わせて摂取させた場合には、抗原投与により誘導されるIgE抗体の産生が低下することを報告しており、この食餌効果のメカニズムを究明するべく研究を行った。平成16年度は、IgE産生に影響するマウスのサイトカイン産生について検討した。BC+高AT摂取マウスにおいて、IL-12産生が高まることを、免疫BALB/cマウスの脾細胞を用いたex vivo抗原呈示実験により見出した。BCをレチニルエステルで置換すると効果が失われる事から、プロビタミンA活性ではなく、レドックス調節作用が関与していうものと予測された。平成17年度は、BCがマウスマクロファージ培養細胞RAW264の細胞膜を酸化する一方で、細胞質に対しては、グルタチオン(GSH)合成酵素γ-GCSの軽鎖mRNAの増加を導き、結果として、GSH合成亢進に基づく抗酸化性を誘導すること、さらにこの抗酸化性誘導を介してサイトカインmRNA産生に影響を及ぼすことを見出した。ATは、ラジカルによる細胞膜酸化を抑制するが、BCによる酸化は抑制せず、単独では細胞質の抗酸化性やサイトカインmRNA産生に影響を及ぼさなかった。以上のことから、平成18年度は、ATは定量添加として、BCがIL-12分泌に及ぼす影響のメカニズムの解明を目的として検討を行った。そして、主たる結果としては、BCを摂取したマウスの脾細胞でも、細胞内GSH濃度が亢進していることを見出した。抗原呈示細胞内のGSH量とIL-12分泌は相関するという報告もあり、上記の研究と合せて、我々はBCの摂取が、抗原呈示細胞の細胞質に抗酸化的な変化をもたらし、それがIL-12産生亢進、ひいてはIgE抗体産生抑制に寄与していると結論した。
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Bioscience, Biotechnology and Biochemistry 70・9
ページ: 2112-2120
Bioscience, Biotechnology and Biochemistry 7 0-9