卵巣摘出ラットをモデルにエストロゲン欠乏誘導性高コレステロール血症に対する脂肪およびタンパク質の影響を検討した。脂肪源としては飽和脂肪酸、n-9系多価不飽和脂肪酸、n-6系多価不飽和脂肪酸、n-3系多価不飽和脂肪酸をそれぞれ特徴的に含む、バター脂(MF)、水添パーム油(HL-SA)、高オレイン酸サフラワー油(HO-SA)、高リノール酸サフラワー油(HL-SA)、シソ油(PO)、魚油(FO)を用いた。また、タンパク質源としては動物性タンパク質としてカゼインを、植物性タンパク質として小麦(WP)、大豆(SP)、ジャガイモ(PP)、米(RP)より調製したタンパク質を、魚タンパク質として鱈より調製したタンパク質(FP)を用いた。 血漿コレステロール濃度は他群に比べFO群で有意に低下し、PO群では有意差は無いが低下傾向を示した。この低下はLDL-コレステロール濃度の低下に拠るところが大きかった。α-リノレン酸はEPA、DHAに変換されることから、FOおおびPOの血漿コレステロール低下効果にEPA、DHAの関与の大きいことが考えられた。LDLR mRNA発現量は他群に比べ、FOおよびPO群でむしろ低下した。小腸内容物中胆汁酸量、糞中胆汁酸排泄量はCYP7A1mRNA発現量が有意差は無いが、多くなるほど多くなる傾向を示した。 カゼインに比べ、大豆、じゃがいもおよび鱈タンパク質では血漿コレステロール濃度は低下したが米および小麦タンパク質では低下しなかった。血漿コレステロール濃度の上昇にメチオニン含量、リジン/アルギニン比、メチオニン/グリシン比の増加が挙げられている。カゼインに比べ小麦、米、大豆、じゃがいもタンパク質中のメチオニン含量は低いが、小麦、米、大豆、じゃがいもタンパク質では同程度であり、アミノ酸組成で大豆およびじゃがいもタンパク質のエストロゲン欠乏誘導性高コレステロール血症改善を説明できなかった。しかし、鱈タンパク質のメチオニン含量、リジン/アルギニン比、メチオニン/グリシン比はカゼインよりも低く、アミノ酸組成の関与が示唆された。
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