報告者らは、メンデル遺伝学的に系統分離された外因性高コレステロール血症(ExHC)ラットにおける原因遺伝子を同定するために、連鎖解析を行った。連鎖解析は別系統との掛け合わせを行い、F1系統を作出し、F2系統をF1系統のランダム交配により作出することから始まる。メンデルの法則によりF1系統では仮定される原因遺伝子の変異はヘテロに存在するが、F2になると、ホモに存在する個体が出現する。インターネット上に公開されるラットの染色体の200程度のマクロサテライトマーカーのパターン情報をすべての個体で得る。そのデータと表現型の値(量的形質の場合が多い)、この場合は血清コレステロール値とを照らし合わせて、候補領域を決定する。具体的にはExHCラットとExHCラットの起源系統であるSD系ラットともっとも遠い系統であるBNラット(対照系統)を掛け合わせて、200匹のF2交雑子をつくり、Web上で公開されている70個のマイクロサテライトマーカーを、全染色体を網羅するように選んで、連鎖解析を行った。その結果、第5番および第14番染色体にLOD値が5.4および5.8(3以上が有意)の場所が検出された(Fig.4)。これらの領域はそれぞれ別々にExHcラット由来の領域をもつ個体ではExHcラットとBNラットの中間の値となり、同時にもつ場合ではExHCラットより高い値となる。従って、この2つの領域に遺伝子の変異があり、2つの変異がそろって遺伝することにより、ExHCラットは高コレステロール血症を引き起こすと考えられる。 同定された遺伝子座はまだ、7cM(センチモーガン)と高い値であったため、遺伝子同定のためには、コンジェニック系統を作出して、少なくとも1cMまでに詰める必要がある。コンジェニック系統とは、F2系統よりさらに対照系統であるBN系統の掛け合わせを繰り返し、この領域のみがExHCラットの領域であるような系統を作り出すことである。現在は、コンジェニック系統2世代目が完了し、5世代目で、ExHCラットコンジェニックとする。
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