研究課題
薬膳でいうところの温熱野菜には、身体を温めたり、身体の働きを活発にする作用がある。本研究では、感覚神経に存在するイオンチャネルこそが温熱野菜に含まれる機能成分の作用標的であるとの前提に立脚し、それらの受容体に作用する温熱野菜の有効成分を単離・構造決定した。温熱野菜であるトウガラシに含まれるカプサイシンは、その受容体であるイオンチャネルTRPV1(Transient Receptor Potential Vanilloid type I)を開口する。そこで、TRPV1を強制的に発現させたHEK293VR11細胞を用いて、温熱野菜成分を培地に添加した際の細胞内Ca^<2+>濃度の変化を解析した。まず、カプサイシン類縁体の中で疎水性の高いオルバニレイトがTRPV1を活性化するには、細胞内Ca^<2+>ストアが必要であり、TRPV1活性化に複数の機構が存在すると考えられた。温熱野菜ショウガの辛味成分(gingerol・shogaol)は比較的強いTRPV1賦活活性を有し、それらは副腎からのアドレナリン分泌も促進したことから、エネルギー代謝亢進作用を有していた。特に、10-shogaolは辛味も少なく、大量に摂取できる点から優れた機能成分であった。gingerolとshogaolの側鎖脂肪酸部分をオレイン酸相当と置換した類縁体を化学合成したところ、oleylgingerolの活性は増強されたが、oleylshogaolの活性は低下し、化合物の疎水性とTRPV1賦活能に関連がみられた。同じく温熱野菜であるサンショの辛味成分(sanshool類)のTRPV1賦活作用は極めて弱かったが、その中でもγ-sanshoolの活性が高く、ヒトにおける辛味度とTRPV1賦活能が相関していた。その他の温熱野菜11種と寒冷野菜8種の中からTRPV1賦活成分を探索したところ、温熱野菜のタマネギと寒冷野菜のコムギにTRPV1賦活成分が存在した。43℃の熱刺激に応答するTRPV1は温熱食品にのみ応答すると考えていたが、寒冷食品にも応答したことは驚きで、大変興味深い結果である。
すべて 2005
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