研究概要 |
これまでにα-リノレン酸をアルカリ異性化して得られる共役リノレン酸(CLN)は、CLA以上にラットの脂肪組織重量を減少させることが認められている。ある種の植物種子中には特定の共役リノレン酸(CLN)が含まれるので、アルカリ異性化CLNで認められる作用が、特定の植物種子中に含まれるCLNでも認められるか、ラットを用いた摂食実験により検討した。CLN源として、ニガウリ(9c,11t,13t-18:3)、ザクロ(9c,11t,13c-18:3)、キササゲ(9t,11t,13c-18:3)およびキンセンカ(8t,10t,12c-18:3)の各種子油を用い、対照油としてアマニ油(α-リノレン酸)を用いた。食餌はAIN-93G組成の純化食で、大豆油の一部を各試験油と置換えて食餌中のCLN濃度がそれぞれ約0.7%になるように調製した。このような食餌をSD系雄ラットに4週間自由摂食させて屠殺し、脂肪組織重量、血清および肝臓の脂質分析、肝臓での脂肪酸β酸化能などを測定した。その結果、単位体重当たりの腎臓周辺脂肪組織重量は、対照群に比べザクロ油群でのみ低値を示した。睾丸周辺の脂肪組織重量は、各群間で大きな違いは認められなかった。肝臓重量は対照群に比べザクロ油群およびキササゲ油群で10%程度重かった。血清脂質濃度には各群間で大きな違いはなかったが、肝臓トリグリセリド濃度は対照群に比べザクロ群およびキササゲ群で重かった。肝臓での脂肪酸合成酵素活性は、対照群に比べキササゲ群で高く肝臓重量が重かった一因と考えられた。一方、脂肪酸β酸化能は、対照群に比べザクロ群で高く、脂肪組織重量減少効果との関連が考えられた。このことから、ザクロ油に含まれるプニカ酸にはラット脂肪組織重量低減効果があることが示唆され、CLN含有植物種子の食餌効果は、含まれるCLN異性体間で異なると考えられた。
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