本研究は、「インスリン作用が低下している糖尿病動物では、肝臓で発現するα-トコフェロール輸送タンパク質(α-TTP)量が減少し、このことによって引き起こされる血液循環へのα-トコフェロール供給の低下が、糖尿病時の酸化ストレス状態をさらに悪化させる」というわれわれの提案している仮説に基づき、インスリンによるα-トコフェロール輸送活性制御の分子メカニズムの解明を目的として行われている。平成16年度は、インスリンによりα-TTP合成/分解/細胞内局在、のどこが制御されるのかを見いだすことを目的として研究を行った。その研究実績の中で、インスリンによる制御が認められたものについて以下に報告する。 インスリンによりα-TTP分解量が変化るかどうかについての検討 ラット初代培養肝細胞を種々の濃度のインスリン存在下で12あるいは24時間培養し、α-TTP量を抗α-TTP抗体を用いたウェスタンブロット分析により解析したところ、α-TTPタンパク量はインスリン濃度の10^<-8>Mから10^<-6>Mの変化に強く応答することが示された。また、この応答はα-TTPと同じファミリーのタンパク質にはみられず、α-TTPに特異的であることが示された。次に、シクロヘキシミドを添加して新たなタンパク合成を阻害した状態の初代培養肝細胞を、10^<-6>Mインスリン添加あるいは無添加で培養して同様に解析を行い、α-TTP分解活性について検討した。その結果、インスリン存在下ではα-TTP量が有意に高くなり、インスリンによりα-TTP分解が抑制されていることが示された。
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