研究課題
本研究は、「インスリン作用が低下している糖尿病動物では、肝臓で発現するα-トコフェロール輸送タンパク質(α-TTP)量が減少し、このことによって引き起こされる血液循環へのα-トコフェロール供給の低下が、糖尿病時の酸化ストレス状態をさらに悪化させる」というわれわれの提案している仮説に基づき、インスリンによるα-トコフェロール輸送活性制御の分子メカニズムの解明を目的として行われている。平成16年度の研究成果から、インスリンによるα-TTP分解の抑制が機能しなくなることが、糖尿病動物におけるα-TTP量の減少を引き起こすことが示された。そこで平成17年度は、1)インスリンによるα-TTP量の制御におけるタンパク質分解系の寄与、2)インスリン添加時のα-TTPの細胞内局在の変化がα-TTP量の変動に及ぼす影響の解析、について検討を行った。細胞内のタンパク質分解の主要な経路である働くリソソーム系とプロテアソーム系について、それぞれの阻害剤を初代培養肝細胞に添加して培養し、インスリン濃度低下に伴うα-TTP量の減少に及ぼす影響を検討した。その結果、プロテアソーム分解経路の阻害によってα-TTP量は大きな影響を受けなかったが、リソソーム分解経路の阻害によりインスリン添加の有無にかかわらず著しく減少した。したがって、α-TTPの分解因子はプロテアソーム系で代謝されていると推察された。また、インスリン添加によってα-TTPの細胞内局在は変化しなかった。一方で、プロテアソーム阻害剤の添加によって、α-TTPが小胞体-ゴルジ体に局在することが新たに示された。
すべて 2006
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (In press)