研究概要 |
研究成果の概要は以下のとおりである。 1.ジペプチジルアミノペプチダーゼ(DPIV)によるモルフィセプチン(Tyr-Pro-Phe-Pro-NH_2)の合成醤油麹菌から分離されたAspergillus oryzae RIB915を用いてフスマ麹を調製し,塩析・ゲルろ過にて部分精製したDPIVの粗酵素液を得た。この粗酵素による合成条件を検討した結果,40%のモルフィセプチンを得ることができた。この研究からプロリンを含有するペプチドの達成が初めて認められた。一般にペプチド形成にはアミノ基の保護が有効とされてきたが,DPIVによるペプチド形成にこのような保護基は不必要であった。 2.DPIVによるLeu-Pro-Tyr-Pro-Arg-NH_2の合成 モルフィセプチンの合成に用いたDPIVを用い, (1)Tyr-Pro-OEt + Arg-NH_2→Tyr-Pro-Arg-NH_2 (2)Leu-Pro-OEt + Tyr-Pro-Arg-NH_2→Leu-Pro-Tyr-Pro-Arg-NH_2 の2段階で,DPIVによるLeu-Pro-Tyr-Pro-Arg-NH_2について,通常の反応系である水系と有機溶媒添加系での合成法を検討した結果,合成収率は水系ではTyr-Pro-Arg-NH_2は31.2%,Leu-Pro-Tyr-Pro-Arg-NH_2は3.3%であった。一方,エチレングリコールを用いた有機溶媒添加系では26.7%に収率が向上した。このことはTyr-Pro-Arg-NH_2,Leu-Pro-Tyr-Pro-Arg-NH_2はともに有機溶媒としてエチレングリコールを添加した系で高い合成収率が得られる結果である。 3.オピオイドペプチドの吸収 食事由来のジペプチド,トリペプチドが小腸がらトランスポーターを介して吸収されることは明らかにされているが,ペンタペプチドLeu-Pro-Tyr-Pro-Argが小腸から吸収されるか否かについては不明であることから,ラットを用いたin vitroでの実験系を用い,解析を試みた結果,胃内投与26分後に門脈血中に確認され,LC/MS分析でLeu-Pro-Tyr-Pro-Argであることが明らかになった。
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