三次元蛍光分光光度計を使ったFDCDスペクトルの測定においては、速度を落として波長走査してやれば妨害成分としてのartifact波を除去できることが判明した。しかし、これに伴う幾つかの問題点が生じた。一つは、波長測定に時間がかかるため、フローセルでのリアルタイム測定ができないこと。もう一つは、蛍光強度は微弱なため、測定精度が非常に劣るということである。これらを解決するために、溶出ピークのトップで送液を止めるStopped-flow測定を行ない、さらに複数の走査による積算スペクトルを求めた。FDCD測定条件の最適化を図ることで、茶飲料に含まれる程度の濃度における微量カテキン類の光学純度が十分測定できることを明らかにした。しかし、測定精度の低さは如何ともし難く、通常の円二色性検出や、光学分割カラムを使った分離測定法には及びも付かないことも明らかとなった。結論として、FDCD法は、リアルタイムでの測定結果が求められる分析手法には適していないことが判明した。 一方、本検出法のバリデーションを行なうための、キャピラリー電気泳動装置(CE)を使った光学分割法においては新たな展開をみた。錯形成に基づく配位子交換型の不斉分離においては、中心元素として遷移金属がもっぱら使われてきた。今回、典型非金属であるホウ素を不斉中心元素として用いる、ジオール化合物の光学分割に初めて成功した。さらに、この錯体の構造をNMRスペクトルで解析することで、CEにおける不斉分離の機構を明らかにした。
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