近年、森林の多面的機能について大きく取り上げられるようになった。その一つに、「森林浴」のように人間を癒すあるいは心地よい環境をもたらすといった機能があり注目を浴びている。そこで、心地よい環境を形成する要因の一つである「音」に着目した。本研究では、ブナ林に続きスギ人工林における音響特性に注目し、森林構造の変化に伴う音響特性を明らかにすることを目的とした。調査地は、山形県金山町、庄内町、東根市のスギ人工林である。ノートパソコン1台を低周波発振機として使用し、スピーカーを通して発振し、デジタル録音機で録音した。発振音には110Hz〜14080Hzの8オクターブとホワイトノイズの計9種類を用いた。この9種類の発振音を2秒間隔で断続的に発振し、最大音量で録音した。録音は、発振用のスピーカーとマイクまでの距離を1、2、4、8、16、32mと呈倍していき各距離で3回計測した。録音されたデータについて、周波数特性と音圧差の比較を行った。その結果、周波数毎では220Hzと440Hzの理論値より5dB以上の音圧差の発生頻度がその他の周波数より2倍以上多くみられ、その70%以上は理論値より小さくなる現象であった。過剰減衰の60%以上が220Hzと440Hzで起っていた。続いて、距離毎では、理論値より5dB以上の音圧差の発生頻度が、32mでその他の距離の1.5倍以上に増えており、その90%以上が理論値より小さくなる現象であった。過剰減衰の60%以上が32mで起っていた。最後に、森林構造の違いでみると、立木密度、胸高断面積合計、材積合計の3つすべての間伐率が30%を越えている山形県庄内町だけで、間伐前後で音響環境の変化がはっきりとみられた。以上の事から、スギ人工林では220Hzと440Hzで減音効果があり、また、32m以上距離が離れると減音効果が期待できることが示唆された。間伐率30%前後に音響環境の違いがはっきり現れるキーポイントがある可能性が示唆された。
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