砂漠化地域である中国黄土高原において、主要な植林樹種である油松(Pinus tabulaeformis)および刺槐(Robinia pseudoacacia)の年輪の早材および晩材の炭素安定同位体比(δ13C)を求め、気象要因との関係を解析した。その結果、油松は気象条件の年変動に対する気孔の反応が強く、水利用効率が高いのに対して、刺槐は同位体比の年変動は少なく、気象との相関が低く、水利用効率も低かった。油松林は下層植生の被度が高く、土壌水分が草原よりも多いのに対して、刺槐林では、草原よりも土壌水分が少なく、下層植生の被度は小さかった。これらのことは、刺槐は水浪費型の成長を行う樹種であることを示唆し、油松のほうが、乾燥地での水ストレスに対して耐性があることが示唆された。 森林衰退地域に関しては、材線虫病によるマツ林の衰退度の毎木調査結果から、IKONOS衛星画像から衰退林分を抽出することに成功した。マツ枯れのメカニズムについては、MRマイクロスコープを用いて非破壊的に観察することにより、runaway embolismの発生が示唆された。 丹沢山地のブナ林では、ブナの衰退の実態を調査し、衰退と菌根の多様性低下の関係が明らかにされた。シカは下層植生に大きな影響を与えているが、菌根には明らかな影響は認められなかった。
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