組換えポプラは、ハイグロマイシン含有選択発根培地で成長させた。結果として、アンチセンスコンストラクト2種類、センスコンストラクト2種類の合計4種類のバイナリーベクターについて、それぞれを過剰発現させた組換えポプラ組織培養苗を合計で40ライン以上得た。組換えポプラ組織培養苗の特徴として、フラスコ内無菌苗の状態では、通常は観察されない分枝化をしている個体が一部含まれていた。また、エチレン合成酵素遺伝子をアンチセンス方向に過剰発現させた組換え体はコントロールと比較して老化が遅い個体の割合が多かった。 次に、それらの組換えポプラ組織培養苗は、葉を材料としてDNAを抽出し、HPT遺伝子の一部をプライマーとしてPCR法により分析を行った。その結果、ベクターコントロールと同様のサイズにバンドを検出し、導入遺伝子の存在を確かめた。それらの遺伝子導入が確認された個体は順次、馴化し、成長させた。水、蛍光灯下で成育するとコントロールと比較してアンチセンス個体は成育が良く、センス個体は成長が悪い特徴が見受けられた。しかし、馴化個体を生物環境調節室(高光度、高栄養の水耕液)に移して成長させたところ、アンチセンス個体とセンス個体及びコントロール間の顕著な成長の差は、ほとんど観察されなかった。 オゾン暴露実験の結果、ACS酵素遺伝子を発現抑制するアンチセンス組換え体は、より強いオゾン耐性を示した。一方、ACS酵素遺伝子を過剰発現するセンス組換え体はオゾン感受性を示した。このように、遺伝子組換え技術によるオゾン耐性の制御に成功した。
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