研究概要 |
高等植物特有の転写制御因子であるERF/AP2ドメインタンパク質のうち,DREBサブファミリーに属する転写因子は,乾燥・高塩濃度や低温等の環境ストレスに対する応答等に関与する。本研究では,シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のDREB1A遺伝子をポプラ(セイヨウハコヤナギ:Populus nigra L.var.italica Koehne)に導入した。これまでに作製した約40ラインのDREB1A導入形質転換ポプラの解析の結果,シロイヌナズナのDREB1A過剰発現形質転換体で観察されるような表現型(成長異常や環境ストレス耐性)は見られなかった。今後,ポプラ形質転換体のライン数を増やすとともに,ストレス耐性試験法を再検討する必要がある。一方,草本植物であるシロイヌナズナのDREB1A転写因子が,木本植物のポプラで正常に機能しない可能性が考えられる。このため本研究では,ポプラ完全長cDNAライブラリーのEST解析から,ERF/AP2転写因子ファミリーに属する遺伝子を単離して解析を行った。その結果,ERF/AP2転写因子ファミリーに属する遺伝子が25個見つかり,それらのうちDREB転写制御因子サブファミリーに属する遺伝子が11個同定された。今後,これらのポプラ由来DREB転写因子をポプラで過剰発現させることにより,効果的な高環境耐性形質転換樹木の作出が期待される。
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