研究概要 |
1.茎頂および腋芽からの多芽体誘導条件の検討 S.multiforaについて、苗木から茎頂および腋芽を切り出し、滅菌後個体および液体培地(旋回培養)にて多芽体誘導を試みた。MS培地を基本とし、窒素源の効果を調べたほか、サイトカイニン系のIBAやBAP,Zeatin,4PU等の植物調節物質の効果(濃度および組み合わせ)を検討した結果、MS培地で、BAP3μMを単独添加した条件では、培養開始から3週間以内に、総供指数8の25%にあたる2個に顕著な鱗片葉の開葉や茎頂の伸長が認められた。多芽体は誘導されなかったが、不定芽誘導にはサイトカイニンの低濃度が効果的であることが明らかとなった。 2.カルスの誘導条件、カルスの分化能評価法及びカルスからの初期不定胚の誘導条件の検討 S.multiforaについては葉を、Paraserianthes falcatariaについては種子胚を用いてMS培地にてカルスが誘導され、さらに幾つかのカルスから、球状の初期不定胚様の組織が形成された。初期不定胚を誘導したカルスの分化能を評価するため、生・乾重量法に加え、顕微鏡によって細胞形態や細胞質を観察した。この結果、分化能を有するカルスの組織的特性が概ね明らかとなった。 3.誘導した多芽体のシュート化条件及び発根誘導条件の検討 多芽体が誘導されなかったため、この課題については大きな成果は得られなかった。発根に関して、さらにサシキをモデルにして、培地の改変、NAA,IBA単独あるいは組合わせ、およびサイトカイニン類の効果を調べることによって、不定芽シュートへの発根誘導条件を明らかにできると考える。 4.初期不定胚の成熟化条件の検討 S.multiforaの葉、Paraserianthes falcatariaの種子胚から誘導されたカルスから、球状の組織が形成され、さらに不定胚の発達を促すためオーキシンとサイトカイニンの効果、およびMS培地の改変の効果を調べたが、完全な不定胚が形成されるまでには至らなかった。
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