研究概要 |
マツタケは外生菌根を形成する食用きのこで,樹木を宿主として共生する.日本のマツタケと形態,香りおよび食味が似ている,いわゆるマツタケと総称される食用きのこは,アジア,ヨーロッパ,アフリカおよびアメリカなど世界各地に分布する.マツタケを生態学的な立場からみると,日本,韓国,北朝鮮で採集されるマツタケはマツ属のほかに,トウヒ属,ツガ属の針葉樹林に発生する.また,中国南西部の常緑かし類を主体とする広葉樹林でもマツタケが発生することの報告がある.したがって,これらのマツタケと総称されるきのこには,宿主特異性からみると,少なくとも生態型の異なるものを含む. 異なる生態型を示すマツタケと総称されるきのこについて,生物種と生態型の関連を解明するためにmt SSU rDNA V4領域の塩基配列を比較し,系統樹を作成したところ,日本産のTm-JK株およびTM-2株は韓国産,北朝鮮産,中国産のマツタケと同じクラスターに属した.V6およびV9領域でも日本産菌株と韓国産、北朝鮮産および中国産菌株が同じクラスターに属した.これらの結果より,針葉樹を宿主とする日本産,韓国産および北朝鮮産菌株は広葉樹を宿主とする中国産マツタケと同一の生物種であることが示唆された.さらに,核rDNA ITS領域の塩基配列を比較し系統樹を作成したところ,すべて異なるクラスターに分かれ,供試菌株間に亜種あるいは品種としての違いがあることが示唆された.これらの成果は、2005年4月に中国・上海で開催される「きのこの生物学とその生産物に関する第5回国際会議」で発表する予定である。
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