研究概要 |
植物の構成分であるリグニン中にはフニノール性及びアルコール性水酸基が存在するため、これらの水酸基とイソシアネートとを反応させることにより、分子鎖中にリグニン構造を有するポリウレタン(PU)を調製することができる。本研究では、リグノスルホン酸ナトリウム塩(LS),と分子鎖の長さが異なるジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)及びポリエチレングリコール(分子量、M_w=ca.200,PEG)とを用いて硬質ポリウレタン(PU)フォームを調製し、得られたPUの熱的性質を、示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量測定(TG)を用いて測定した。 先ずLSをDEG、TEG及びPEGに溶解してLSDEG、LSTEG及びLSPEGのLS含有ポリオールを調製し、これらのポリオールをポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(MDI)と発泡剤(水)、触媒及び界面活性剤の存在下で反応させて、3種類の一連のPUフォーム(LSDPU、LSTPU及びLSPPU)を調製した。ガラス転移温度(T_g)はPUフォームのネットワークを構成するオキシエチレン鎖の長さが短い方が高い。ま,た、LSDPU及びLSTPUではオキシエチレン鎖が短かく十分に剛直であるためにリグニン含有率が増加しても、T_gが余り変化しない。一方、LSPPUではオキシエチレン鎖が長くなるために、分子鎖が柔軟になり、リグニン含有率が増加すると系全体の剛直性が増すことになり、T_gが高くなる。熱分解温度(T_d)は低温側のT_dが約300℃程度の温度領域に観測され、リグニンのフェノール性水酸基とイソシアネート基の解離に基づくものと推定される。一方、高温側のT_dは約350〜380℃程度の温度領域に観測され、ジオール類の水酸基とイソシアネート基との反応により生成されたウレタン結合の解離等に基づくものと考えられる。上記の3種類のPUフォームの見かけ密度(ρ)、圧縮強度(σ)および圧縮弾性率(E)の測定結果は以下の通りであった。ρ:0.08 -0.12g/cm^3、σ:0.5-1.2MPa、E:20-45MPa。σおよびEはρに比例して増加し、調製したLS系ポリウレタンフォームの強度および弾性率が見かけ密度に依存することが明らかとなった。すなわち、実用特性として、重要な機械的強度を変えることはポリウレタンフォームの発泡性を制御することにより、達成しうることが確認された。
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