研究概要 |
コンブ胞子体に及ぼす組織片の状態や植物生長調整物質の影響を調べ、現在までに以下のことが明らかになっている。 1.マコンブ胞子体の基部から先端部にかけて、カルスの誘導を試みたところ、分裂組織が位置する基部に近いほど早く誘導されることが確認された。また、幼胞子体の方が、成体よりも早くカルス様細胞を誘導することを確認し、カルスの誘導と細胞分裂能の密接な関わりが示唆された。 2.マコンブ幼胞子体をIAA(インドール-3-酢酸),2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸),NAA(ナフタレン酢酸)のオーキシン類のカルス誘導に及ぼす影響を調べた。その結果,用いた組織片により異なるが、10^<-8>〜10^<-5>Mの濃度は範囲内でしばしばカルスの誘導促進効果が見られた。一方,10^<-4>Mの濃度ではカルスの誘導阻害が認められた。これらのことは、体内のオーキシン含量が誘導に左右していることが予想された。 3.葉長1cm未満の幼胞子体をオーキシン処理したところ、葉状体の中心線付近では隆起が、縁辺では規則正しく分裂をすることなく歪になってきた。このことは、処理が葉状体の持っている統制を撹乱し、成長の方向性が不定となったために生じたものと考察された。 4.3の成長統制が撹乱きれた葉状体を2,4-Dを含まない培地に移したところ葉状体の隆起した部分や、縁辺の細胞分裂の活発な部分から新たな葉が形成され、結果的に枝分かれしたコンブ葉状体を形成することとなった。その分岐数は一定ではなく2,4-D処理の濃度や程度によって左右されていると思われた。これらの結果は、コンブ類のカルス形成メカニズムや形態形成メカニズムの解明に向けて、重要な手がかりになる現象であると考察された。
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