ヒラメよりクローン化した腫瘍壊死因子TNF-αのプロモーター領域をレポーター緑色蛍光タンパク質遺伝子(GFP)ならびに細菌由来のクロラムフェニコールアセチル転移酵素(CAT)遺伝子の上流に連結した組換えプラスミドDNAを構築した。これら組換えプラスミドDNAをヒラメの腎臓および胚より樹立された株化細胞YO-KとHINAEへ導入した。次いで、細胞培養液中に細菌内毒素であるリポ多糖を添加し、経時的にレポーター遺伝子の発現変化を測定したところ、遺伝子発現が誘導されることが分かった。また、リポ多糖の添加する量に依存してレポーター遺伝子の発現量も変化した。さらに、プロモーター領域のデレーションミュータントを作製し、プロモーター活性を測定したところ、内部に存在するNf-KB結合領域がLPS応答に重要であることがわかった。 ゼブラフィッシュ胚への組換えプラスミドDNAの導入はマイクロインジェクション法により行った。組換えプラスミドDNA導入個体の選別は、鰭の一部よりDNAを抽出し、レポーター遺伝子を標的としたPCR法により行った。PCRで陽性になった個体を飼育し、F2世代を作出した。このF2世代のトランスジェニックゼブラフィッシュを用いて腫瘍壊死因子TNF-αのプロモーターの働きを詳細に解析した。トランスジェニックゼブラフィッシュ胚を種々の濃度の細菌内毒素(リポ多糖)溶液に浸けると、高濃度の溶液ほどGFPの発現が多く観察された。このことから、ヒラメ腫瘍壊死因子TNF-αのプロモーターは、ゼブラフィッシュ個体内においてもリポ多糖に対して応答することが明らかとなった。
|