研究概要 |
初年度は,細胞生物学的に基礎的な知見を得るために,クルマエビ血球からのフリーラジカル検出方法の確立を試みた。 1.フリーラジカル検出試薬の検討 活性酸素種の1つであるヒドロキシラジカル(^-OH)およびO_2^-とNOの反応産物であるperoxynitrite(ONOO^-)を検出するために新たに開発されたaminophenyl fluorescein(APF)を用いる。これらの蛍光強度の測定には,マルチプレートリーダーを用いることにより,短時間で多検体を処理することができた。 2.フリーラジカル検出に最適な抗凝固剤の検討 抗凝固剤として従来用いられていた1-システインのほかに,クエン酸とEDTAなどを用いたところ,O_2^-とNOの産生は確認できた。 3.クルマエビ血球の培養条件の検討 2倍濃度のL-15培地に数種の添加剤を加えた新しい培地を考案した。この新しい培地が血球の培養および顆粒球の分離にも応用でき,フリーラジカルの検出にも適当であることが明らかとなった。 4.刺激剤の検討 in vitroの刺激剤として従来から使用されてきたLPSのほかにもウイルス粒子や菌体あるいはその構成成分でもNOが産生されているかどうかについて検討し,微弱ながらNOが検出された。 5.フリーラジカル産生の経時的変化 種々の刺激剤の感作後,経時的にNOの検出を試みて,誘導型のNOと非誘導型のNOが存在するかどうかについて検討したが,安定した結果は得られなかった。 6.ウイルス感染エビにおけるフリーラジカルの動態 ウイルス感染クルマエビにおいては,フリーラジカルの産生が低下することを明らかにした。 7.ストレス負荷クルマエビにおけるフリーラジカル産生性 ハンドリングなどのストレスを負荷したエビの血球を分離して,血球組成とフリーラジカル産生能について検討した結果,フリーラジカルの産生が減少した。
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