研究概要 |
細胞生物学的に基礎的な知見を得るために,クルマエビ血球からのフリーラジカルの産生に及ぼす免疫賦活剤の影響について検討した。 1.免疫賦活剤投与エビ血球のフリーラジカル産生能(吉田・伊丹) 我々はすでにペプチドグリカンやLPSの経口投与によってクルマエビの生体防御能力が亢進することを明らかにした。しかし,免疫賦活剤がどのようにしてエビの生体防御能力を増進して,病原因子を殺滅しているかを明らかにするために,免疫賦活剤投与エビの血球のフリーラジカル産生能と試験管内殺菌活性を平行して測定した。その結果,血球のフリーラジカル産生能と試験管内殺菌活性に相関性があることを明らかにするとともに,NO合成酵素産生阻害剤の添加によって殺菌活性の一部が低下した。 2.免疫賦活剤投与エビ血清のフリーラジカル産生誘導能(伊丹) すでに我々は,LPSの経口投与によってクルマエビ血清中に生体防御因子(あるいは生体防御因子誘導物質)が産生されることを明らかにした。しかし,本因子がどのような作用を持つかは明らかではない。そこで,分離・培養したクルマエビ血球をLPS投与クルマエビ血清で感作して,フリーラジカルの産生について検討した。その結果,NO産生が誘導されたことから,血清中にサイトカイン様の物質の存在が示唆された。 3.クルマエビNO産生酵素遺伝子の構造および発現解析(伊丹) 刺激後のクルマエビ血球からcDNAライブラリーを作製してEST解析を行うとともに,すでに明らかにされているNO合成酵素の遺伝子配列からdegenerated primerを用いてスクリーニングをいった。その結果,LPS感作血球において,PCR産物が認められたことから,血球においてNO合成酵素が存在することが示唆された。
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