本年度に行った研究の成果は以下の通りである。 1.ヒラメ種苗生産施設における魚病細菌Listonella anguillarumの動態 2004および2005年にヒラメ種苗生産施設内のヒラメ仔稚魚、飼育水、餌料生物、配合飼料から従属栄養細菌を分離し、Sugita et al.(2005)の方法に準拠してビブリオ病原菌Listonella anguillarumを同定した。ヒラメ種苗生産施設における本菌の動態を調べたところ、ヒラメ仔稚魚のほか、ワムシやアルテミアなどの餌料生物から本菌が比較的高頻度に検出されることから、本菌の来源が餌料生物であることが強く示唆された。またヒラメ種苗生産施設でのL.anguillarumの防除にはプロバイオティックスが有望であることが強く示唆された。 2.沿岸魚類の腸管内における培養可能な細菌 沿岸魚類8種の腸内容物における培養可能な細菌は全菌数の0.00003〜80.9%に相当した。さらにボラの腸内細菌叢をFISH法で測定したところ、培養法では検出できない細菌群が多数存在していることが判明した。以上の結果より、沿岸魚類の腸管内には培養できない新規な細菌が生息していることが強く示唆された。 3.プロバイオティックスとして用いた腸内細菌の魚類への投与 腸内細菌をトラフグおよびキンギョの稚魚に経口投与し、飼育水中でのVibrio科細菌の消長を調べた。その結果、プロバイオティックス投与区では飼育水中のVibrio科細菌数が対照区と比べて顕著に減少したことから、これらのプロバイオティックス細菌による病原細菌の抑制効果が高いことが判明した。 以上の結果より、魚類の種苗生産環境中には魚病細菌が常在しており、これらの細菌による感染症の防除にはプロバイオティックスが有効であることが示唆された。
|