本研究における成果の概要は以下の通りである。 1.ヒラメ種苗生産施設における魚病細菌Listonella anguillarumの動態を調査した結果、仔稚魚に存在する本菌は主にワムシなどの生き餌や飼育水由来であることが判明した。また日和見病原菌の防除にはプロバイオティックスが有効であることが示唆された。 2.沿岸魚類8種の腸管内容物中における細菌の0.00003〜80.9%が培養可能であった。またボラの腸内細菌叢をFISH法で測定したところ、培養法で高頻度に検出されるGammaproteobacteriaのほかに、Alphaproteobacteria、Betaproteobacteria、Deltaproteobacteriaおよびグラム陽性細菌が同レベル検出されたことから、沿岸魚類腸内には多様な細菌種が生息していることが判明した。 3.ヒラメの腸内優占菌はVibrio scophthalmi-V. ichthyoenteri群およびV. fischeriであった。それらの大部分はコロイダルキチンを分解した。またヒラメ腸管および飼育水のうち、魚類病原細菌に対する高い抗菌活性を示した細菌は、V. harveyi、V. ichtyoenteriおよびV. fischeriであった。 4.ニジマスにLactobacillus rhamnosus JCM 1136株を経口投与したところ、投与区の血清中のリゾチーム活性および補体(代替経路)活性は対照区と比べ有意に上昇した。また頭腎白血球の貧食能も同様の傾向を示した。これらの結果から、L. rhamnosus JCM 1136株にはニジマスの免疫能を向上させる効果があることが示唆された。またニジマスにおける免疫能の上昇には生菌の投与が重要であることが判明した。
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