研究課題
生殖腺刺激ホルモン(GTH)はFSHならびにLHの総称で、成熟誘導機能タンパク質として配偶子形成を制御する。2種類のGTHは共通のαと互いに異なるβ(FSHβとLHβ)サブユニットからなり、その生物活性の保持において両サブユニットの2量体形成は必要不可欠である。当該年度においては、前年度に人工合成したマダイの組換えGTH(FSHとLH)の生物学的特性を明らかにするために、研究実施計画に記載した解析を行い、以下の結果を得た。(1)精子形成に関わる雄性ホルモン合成に及ぼす効果精巣における雄性ホルモン(11-KT)の産生が、組換えFSHならびにLHによって増加することが明らかとなった。これらの効果は天然のものと同様のものであり、精製標品を用いた解析によって、カイコ体液1μl中に精製標品300ng相当の組換えGTHが含まれていることが判明した。また、雄性ホルモンの産生酵素(11β-水酸化酵素)の発現においても天然のものと同様の生物学的効果を示した。さらに、カイコ体液にはGTHによる雄性ホルモン産生を阻害する物質が含まれていることが明らかとなった。(2)卵黄形成に関わる雌性ホルモン合成に及ぼす効果共感染系で合成したマダイの組換えLHが、卵濾胞における雌性ホルモン(E2)の産生を促すことが明らかとなった。他方、組換えFSHによるE2産生に及ぼす影響はほとんど見られず、雌マダイにおける2種類のGTHの生物学的特性は天然のものと同じ傾向を示した。さらに、雌性ホルモン産生酵素(アロマターゼ)の発現に及ぼす効果も天然のものとほぼ同等であることが明らかとなった。さらに、GTHの雌性ホルモン産生に阻害的に働く物質がカイコ体液中に存在することがわかった。以上の結果より、遺伝子工学的手法を用いて合成した2種類の組換えマダイGTHが、天然のGTHと同等の生物活性を持つことが魚類で初めて明らかとなった。また、カイコ体液にはGTHのステロイド産生に抑制的に働く物質が含まれていることが示唆された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Fisheries Science 71
ページ: 1049-1058
Comparative Biochemistry and Physiology B: 142
ページ: 383-390