・投与したDHAは腸管内でリン脂質へ取り込まれコイの場合、短時間で肝臓中に検出される。コイは無胃魚であり、また、肝膵臓が腸管を取り囲むように存在し、腸管から吸収された放射性DHAは短時間のうちに肝臓中に出現するものと思われる。コイの場合腸管から肝膵臓への間の腸管壁からの吸収機構の解明、腸管から肝膵臓までの移行脂質形態、またはリポタンパク質形態の解明、肝膵臓への取り込み機構の解明は、極めて短時間に起こる代謝機構の中で今後明らかにされねばならない。これら放射能の投与は購入したファイバースコープを利用した。 ・血漿リポタンパク質への放射性脂肪酸の出現は高度不飽和脂肪酸の場合、その出現量は比較的少なく、血漿リポタンパク質リン脂質とくにホスファチジルコリンのにその大半が存在した。しかし、血漿と比較し、血球に関しては、白血球画分のリン脂質カルジオリピンにDHAが取り込まれていた。しかし、EPAやアラキドンに関してはこのような現象は見られなかったことから、今後の検討課題となった。 ・血漿リポタンパク質間の脂質の動態に関して、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)やリン脂質転送タンパク質(PLTP)などの活性の存在を放射性高度不飽和脂肪酸や調製リポタンパク質を用い明らかにすることができたが、カルジオリピンは、哺乳類の場合ミトコンドリア内膜に局在が報告されているが、魚類での報告は無く、血液細胞カルジオリピンの血漿リポタンパク質との脂質代謝における関係については次年度に行う予定である。 ・特に腸管への吸収や腸管組織から体内への移行、また、肝臓への脂質の搬入の機構に関しては魚類での報告ははとんど無く、受容体、膜タンパク質トランスポーターなどの知見もこの課題を包括的に考える上で極めて重要と考えられ今後の展望が次第に明らかになった。
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