群体性微細緑藻Botryococcus brauniiは大量の液状炭化水素を生産するため、再生産可能なエネルギー資源としての利用が考えられている。本藻種にはA、BおよびLの3品種があり、これらの中でエネルギー資源として有望なのはbotryococcene類およびスクアレン誘導体等のトリテルペンを生産するB品種である。Botryococceneはスクアレン合成酵素に非常に良く似た酵素によるファルネシル二リン酸の縮合、あるいはスクアレン合成酵素そのものの副反応で生成するものと考えられているが、その生合成反応の詳細は不明である。B.braunii由来のスクアレン合成酵素遺伝子をプローブとしたcDNAライブラリーのスクリーニングにより、botryococcene合成酵素遺伝子と思われるクローンが得られたが、大腸菌で発現させても単体ではbotryococcene合成酵素活性を示さなかった。藻体粗抽出物を用いた酵素活性の測定から、botryococcene合成酵素はスクアレン合成酵素とは異なり、界面活性剤により活性を失うことが示された。また、スクアレン合成酵素の反応中間体であるプレスクアレン二リン酸に似た構造を持つ、同酵素の特異的な阻害剤であるスクアレスタチンによりbotryococcene合成酵素活性も阻害されたことから、botryococceneはスクアレン合成酵素と非常に似ている別の酵素により作られることが明らかになり、得られた遺伝子産物がその酵素である可能性がさらに高まった。この遺伝子産物が単体で活性を示さないのは、界面活性剤により相互作用が失われてしまう様な、弱い結合をしている補酵素が関与している可能性が示され、現在、その本体を追跡中である。
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