研究課題
ザリガニの胸部神経節および腹部神経節から調製した凍結切片を用いたMALDI-TOF質量分析では、すべての胸部神経節および第1から第5腹部神経節に至るまでよく似たスペクトルのパターンが与えられた。即ち、オルコキニン、甲殻類SIFアミド、甲殻類心臓作用性ペプチド、十脚目タキキニン関連ペプチド、FLRFアミド等が主に観察されていた。これらの結果は、甲殻類のはしご形神経系ではある行動に対する応答について、同じタイプのコンピューターを並列に配置した分散並列処理していることを示唆した。一方、肛門からの飲水行動に深く関わっていると考えられている第6腹部神経節では、オルコキニン関連ペプチドが極めて強い分子イオンピークとして観察された。また、第6腹部神経節からFLRFアミドの分子イオンピークは検出することができなかった。次に、オルコキニンおよびその関連ペプチド、甲殻類SIFアミド、甲殻類心臓作用性ペプチド、十脚目タキキニン関連ペプチド、およびFLRFアミドの合成品を調製し、肛門の開閉との関連を調べた。各種ペプチドは10^<-5>Mになるようザリガニ用生理食塩水に溶解し、その20マイクロリッターを腹部へ投与した結果、オルコキニンおよびその関連ペプチド、甲殻類心臓作用性ペプチド、十脚目タキキニン関連ペプチドに強い肛門の開閉活性が認められた。甲殻類SIFアミドでは、投与後少し時間がたってから肛門の開閉が観察され、これは糞の排泄に伴った現象であることが確認できた。また、生理食塩水および神経情報伝達物質の1つであるガンマ-アミノ酪酸の投与では肛門の開閉が行われることはなかった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Gen.Comp.Endocrinol. 141
ページ: 291-303