研究課題
本研究の目的は、輸出国家貿易と輸出規律の実態および制度を、主としてニュージーランド(NZ)の酪農・乳業を事例として、実証的に明らかにすることにある。具体的には、当該産業の市場構造、市場行動ならびに市場成果として分析する産業組織論のフレームワークに依拠して分析を試みる。本年度は、第1にNZ酪農・乳業の市場行動として、乳業部門におけるNZと豪州の国を超えた合併・統合の動向を分析した。第2にニッチ市場への取り組み事例として有機酪農を取り上げ、これを日本・NZ間で比較分析するための予備調査を実施した。第3に自由貿易協定(FTA)締結がNZ及び日本の農業・酪農に及ぼす経済的影響を応用一般均衡分析で試算した。分析結果から明らかになった点は以下の通り。1.近年の乳業部門におけるNZと豪州の国を超えた合併・統合については、主として国際競争力で優位にあるNZ側が豪州側を合併・統合して行くというNZ側が主導する動きである点。2.有機酪農については、(1)NZでは既に有機畜産の認証制度は確立し有機の牛乳・乳製品は国内に流通しており、また有機酪農のモデル農場を大学に設置し試験研究を実施するなどの積極的な取り組みが見られる点、(2)日本では有機畜産および有機飼料のJAS規格が2005年に施行されたばかりの中、有機畜産の認証取得を目指している酪農家グループを対象とした予備調査の結果から、有機粗飼料生産への転換に伴って肥料費や労働費を主因とした粗飼料生産費の増大が見られるなどの諸問題に直面している現状にある点。3.仮に日本とNZが二国間で全関税を撤廃するFTAを締結した場合の経済的影響を応用一般均衡分析で試算した結果については、(1)GDPなどのマクロ経済的影響は日本よりもNZの方が大きい点、(2)NZから日本への乳製品輸出が大幅に増大する一方、NZ以外の国から日本への乳製品輸出が大幅に減少する点。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
2005年度日本農業経済学会論文集(農業経済研究・別冊)
ページ: 138-143
Journal of the Graduate School of Agriculture, Hokkaido University 72・1
ページ: 1-10