17年度は、兼業化の進む地域の遼寧省を中心として、現地調査を実施し、調査に基づくデータベース作りを行った。調査実施期間は14日間、調査者は研究代表者、大学院生のグリヌア・マイマイティ、海外共同研究者の曹力群が現地に入って行った。 まず、電子メールで情報交換を行いながら、前回の調査の反省点を省みながら修正した農業経営行動に関する調査表を作成した。経営の慣習的側面を明らかにするために、賃金、借金が支払われなったときの対応、取引相手、取引相手との人間関係など、適応行動の質的な質問を取り入れた。実際に調査票に基づきながら、遼寧省の市場経済の発達レベルの異なる3村を選択して、総計約60件の農家に対し面接調査を行った。その結果をデータベースとしてまとめている。調査を行った農家はすでに農業部において、農家経済に関するミクロデータが作成されており、経済的側面と慣習的側面を併せ持ったデータとして完成させている。ただし農家の答え方のあいまいさがあり、十分なデータを得られたとは言えない側面もある。さらに改善して次年度以降の調査につなげる予定である。 それでも以下のような新知見が得られた。(1)遼寧省の農家は、法的な司法制度に保護された経済活動は行っていない。取引上のトラブルに対しては、宗族といった血縁関係にはたよっていない、むしろ村民委員会などの村内の政治によって解決を図ろうとしている。(2)取引に対しては、トラブルを避けるための現金取引が可能な場合に固執している。(3)それでも農村工業化が進む地域だけあって、司法制度による取引上の問題解決を望む農民も徐々に現れてきている。
|