研究概要 |
18年度は、貧困程度の高い内陸部の湖北省を中心として、現地調査を実施し、調査に基づくデータベース作りを行った。調査実施期間は14日間、調査者は研究代表者、大学院生のグリヌア・マイマイティ、海外共同研究者の曹力群が現地に入って行った。まず、前回、前々回の調査の反省点を省みながらさらに修正した農業経営行動に関する調査表を作成した。経営の慣習的側面を明らかにするために、賃金、借金が支払われなったときの対応、取引相手、取引相手との人間関係など、適応行動の質的な質問を取り入れた。実際に調査票に基づきながら、湖北省の市場経済の発達レベルの異なる3村を選択して、総計約60件の農家に対し面接調査を行った。これまでの3省で行われた調査結果をまとめて次のような結論を得た。(1)非農勤労の就業はまだまだ縁故が主流で関係主義が根強く残っているが,紹介者は親族以外が大きな役割を担うようになっている.雇用先での賃金未払いに対しては,縁故に頼って解決しようとする気運がまだ強いが,湖北省では裁判所による法治が認識され始めている.(2)農業雇用においては親戚,知人が主で相互扶助的な側面が残っているが,賃耕の場合は無関係な相手も増えてきており,インパーソナルな市場化が進んでいることをうかがわせる.(3)農地の貸借(転包)は,縁故による関係が主であるが,村民委員会の紹介や無関係な相手との直接取引などインパーソナルな市場化も進んでいる.(4)農産物販売はスポット的な取引が主流であり,しかも現金払いが原則でインパーソナルな市場化が最も進んでいる.代金のトラブルに関しても縁故に頼って解決しようとする傾向は見られない.(5)信用は一部信用社も利用されているが,基本的に関係主義だけに基づいている.返済されなくても法治による解決は望まれておらず,もともと親族などへの扶助の意味合いが強い.
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