日本の消費者は安全性などの観点から食料自給率の向上に対する志向を根強く有していると言われながら、日本の食料自給率は供給熱量ベースで40%まで低下した。食料自給率が低下した要因として、食生活の高級化(洋風化、欧米化)による食事メニューの変化と、家庭内調理による食事から調理済み食品の利用や外食の頻度が増大したことがあげられる。その一方で、日本の消費者は国産食料に対する志向を持ち続けていると言われている。食料輸入大国の日本がこれからどのような方向で農業および食料政策を実施していくべきかということを考える上で、食料自給率向上の理論的根拠について考察し、それが日本の食料輸入に与える効果を捉えることが本研究の課題である。 分析結果の概要は次のとおりである。 1.食生活の高級化(洋風化、欧米化)による食事メニューの変化と、家庭内調理による食事から調理済み食品の利用や外食への代替が進行したことについて、『家計調査』『社会生活基本調査』『国民生活時間調査』『労働力調査』などの統計資料を整理して、時系列の推移を明示した。 2.需要サイドの分析から、日本の消費者は国産食料に対する志向を有し、これが食料自給率の低下を押しとどめる方向に作用したとする定性的見解がある。この点について需要体系分析を実施し、消費者の国産志向を計量的に捉えた。その一方で、家計における調理技術の低下や世帯規模の縮小は、食料自給率の低下を促進させたことを明らかにした。 3.供給サイドの分析から、日本にとって主要な食料供給国である米国などの国について、国内農業政。策が日本の輸入CIF価格に与える影響を計量的に捉えた。「自由貿易の優越性」の前提を排して、輸出国の戦略的な行動による貿易の効果を検討した。
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