研究概要 |
本研究の目的は、国際貿易空間均衡モデルに関する次の(a)、(b)、(c)の新たな展開を行い、従来の研究の残された課題をより一般的なモデルの枠組みの中でよりよく達成し、かつモデルの応用範囲を飛躍的に拡大することである。(a)従来の単純化された流通ルートに対して、より具体的な流通ルートを考慮しうるモデルの展開を行う、(b)農業生産の不安定性に起因するリスクを均衡条件の中で考慮しうるモデルの展開を行う、(c)以上のような国際貿易を含む経済システムのモデルの均衡解を得るために、これまでに作成したパソコンプログラムを近年のパソコンのハードウエアや言語等の発達を考慮に入れて改善し再構築する。 平成16年度の研究実施計画は、(a)、(b)、(c)の視点から従来の研究成果を要約し、従来の分析方法を発展させ主に(a)と(c)に関する研究を行うことであった。この計画に対する研究実績は次のとおりである。 第一に、(a)、(b)、(c)の視点より国際貿易空間均衡モデルに関する従来の研究成果を、最新の文献をも参照しつつ要約し、川口(2005)として公表した。 第二に、国際貿易空間均衡モデルへの差額関税制度の導入に関する前年度からの研究を終了し、差額関税制度下のわが国の豚肉市場への輸入制度変更の影響の実証分析を行い、Bergen and Kawaguchi(2004)として公表した。なお、この研究をさらに改善し9ヵ国モデルとしたものが、International Conference on Policy Modeling(Ecomod 2005)、The Conrad Istanbul, June 29-July 2,2005、の発表論文として受理されている。 第三に、これまでに作成していた関連するパソコンプログラムを改善し、Visual-Basic V6.0およびF-Basic V6.3を利用して書き直し、大規模なモデルの計算を行いうるようにした。特に三商品の非線形国際貿易空間均衡モデルのプログラムを作成し、米、小麦、トウモロコシの20カ国の具体的なデータに基づき均衡解を得ることに成功した。またそのモデル及びプログラムへの差額関税制度の導入にも成功した。これらの成果は次年度公表予定である。 第四に、国際乳製品市場に関連する研究として、ベトナムのメコンデルタにおける酪農に関する経営・経済分析を行い、Chu et. al(2004)として公表した。
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