研究課題
本研究の目的は、国際貿易空間均衡モデルに関する次の(a)、(b)、(c)の新たな展開を行い、従来の研究の残された課題をより一般的なモデルの枠組みの中でよりよく達成し、かつモデルの応用範囲を飛躍的に拡大することである。(a)従来の単純化された流通ルートに対して、より具体的な流通ルートを考慮しうるモデルの展開を行う、(b)農業生産の不安定性に起因するリスクを均衡条件の中で考慮しうるモデルの展開を行う、(c)以上のような国際貿易を含む経済システムのモデルの均衡解を得るために、これまでに作成したパソコンプログラムを近年のパソコンのハードウエアや言語等の発達を考慮に入れて改善し再構築する。平成17年度の研究実施計画は、前年度の研究成果及び不確定情報下における経営計画等の従来の研究成果に基づいて、研究目的(b)に関する集中的な分析、研究目的(a)、(c)に関する補足的な実証分析、国際農畜産物市場への環境問題の影響の分析を行うこと、および以上の研究成果を要約すると共に、経済システム空間均衡モデルの農業経済研究における意義と限界、及び残された課題について要約することである。この計画に対する研究実績は次のとおりである。第一に、(a)、(b)、(c)の視点より国際貿易空間均衡モデルに関する従来の研究成果を、最新の文献をも参照しつつ要約し、川口(2005)として公表した。第二に、国際貿易空間均衡モデルへの差額関税制度の導入に関する前年度からの研究をさらに展開し、差額関税制度下のわが国の豚肉市場への輸入制度変更の影響の9ヵ国モデルによる実証分析を行い、BERGEN and KAWAGUCHI (2005)としてInternational Conference on Policy Modeling (Ecomod 2005)で発表した。第三に、従来の関連するパソコンプログラムを改善し、Visual-Basic V6.0およびF-Basic V6.3を利用して、三生産物の非線形国際貿易空間均衡モデルのプログラムを作成し、米、小麦、トウモロコシの20カ国の具体的なデータに基づく国際貿易空間均衡解を得ることに成功した。穀物生産の不安定性も考慮に入れてそのプログラムを利用し、世界の穀物需給への中国人民元の切り上げの影響を分析し、朱・前田・川口(2006)として公表した。なお、予定外の人民元の切り上げ問題に多くの時間が割かれ、残りの問題は次年度以降の課題とせざるをえなかった。第四に、国際乳製品市場に関連する研究として、前年度に引き続き、ベトナムのメコンデルタにおける酪農に関する経営・経済分析を行い、CHU, YOKOGAWA and KAWAGUCHI (2005)として公表した。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
農業経済論集 第56巻第2号
ページ: 27-37
EcoMod 2005 International Conference on Policy Modeling, Istanbul, Conrad Hotel, June 29-July 1,2005 (this paper is available by downloading from EcoMod 2005 home-page) EcoMod 2005 home-page
ページ: 1-28
近代経済学的農業・農村分析の50年(農林統計協会、2005年7月)(泉田洋一編) 単行本
ページ: 171-195
Journal of the Faculty of Agriculture, Kyushu University 50・1
ページ: 271-294