研究概要 |
政策評価分析(PEM)手法を、わが国のコメ部門に適用した。輸入制限を通じた市場価格支持、生産物を対象とする直接支払いとしてのJRIS、投入財補助金、生産調整、および直接支払いのひとつである転作助成金の経済的評価が目的である。さらに本研究では、多面的機能論へのアプローチとして、水田のもつ国土保全機能を取り上げ、政策変数とされた上記農業諸施策との関係をモデル化し、さらに金銭的な評価による費用便益分析の枠組みに加えた。ミニマムアクセスで表現される市場価格支持および投入材補助の費用便益的視点で見た効率性の低さと、JRISおよび転作等助成金による直接支払いの効率性の高さを再確認した。 また、WTOおよびFTA交渉という,日本が二正面対応を迫られている課題を考察するにあたって求められる分析的な側面について,定量的かつ方法論的な視点からの検討を行った.市場価格支持からデカップリング的な直接支払いへの移行という点で,日本の農政改革が遅れをとっていることを確認した後,各種の政策効果を費用便益的観点から捉える分析の重要性を明らかにした。FTAが日本の国内農業に及ぼす影響に関する方法論的な検討により、予測において重要と思われるポイントをしめした。FTAの影響予測分析でしばしば適用されているGTAP分析の問題点を指摘し,個別の事例にそくした考察の重要性を明らかにした.個別品目を念頭においた「FTAの影響評価」として,コメのほか,豚肉,砂糖,でんぷんなど,特に日本が高関税を残している品目については,もっとも基本的な情報となる現状の関税相当量を知ることも容易ではないという分析の困難性を示した.
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