本研究は女性農業者のキャリア形成のメカニズムを解明することを目的としている。最初に、女性農業者のキャリア形成に関する理論的考察からキャリア形成の理論的枠組みを提示し、ついで、女性農業者に対する聴き取り調査やアンケート調査を実施し、その結果を整理して女性農業者のキャリア形成過程に関する実証分析を行った。 女性農業者のキャリア形成に関する理論的考察から、キャリア形成の構成要素として自己概念と職業観があり、それらは相互作用によって変化すること、また自己概念と職業観は外部要因である情報の刺激によって変化することを明らかにした。こうした女性農業者のキャリア形成に関する理論的枠組みを実証するために、農村女性への聞き取り調査及びアンケート調査を実施した。九州農政局と兵庫県農林水産部、兵庫県農業普及開発センターおよびJA兵庫西の協力を得てアンケート票を配布した。女性農業者の研修会に参加した方にはその場で記述後、アンケート票を回した。研修会参加者の家族、パートナーへのアンケートを依頼が可能な方にはアンケート票を持ち帰り、記述後郵送で回収した。平成17年8月から12月にかけて784通配布し、回収は437通であり55.7%の回収率であった。 このようにして収集した情報・データの分析から、女性農業者のキャリア形成の構成要素は外部要因である情報の刺激によって変化することが分かった。聴き取り調査を行った女性農業者の事例分析から、職業キャリア、人生キャリアを蓄積することにより、農村女性が生き生きと働ける環境が創出されている実態を明らかにすることが出来た。こうした分析結果は、キャリア形成に関する理論的枠組みを支持するものであった。 多くの女性農業者のキャリア形成に関するサクセスストーリーを分析・整理することから女性農業者のキャリア形成に対する支援策を構築する手がかり得られると考えられる。女性農業者の事例研究数は現在13名にとどまっているので、今後より多くの農村女性への聞き取り調査を継続することを計画している。 本研究で得られた研究成果の一部を、平成17年10月に三重大学で開催された地域農林経済学会大会において発表した。
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