持続可能な園芸生産システムの構築を意図して、農業生産活動が環境に与える影響を統合的に評価する手法の確立を試みた。研究事例として施設トマト生産(土耕栽培および養液土耕栽培)を取り上げ、以下の研究を実施した。 1 園芸生産の統合的評価モデルの構築 施肥および薬剤散布の環境影響を評価するために、ライフサイクルアセスメント(LCA)の問題比較型の方法(環境影響を地球温暖化や富栄養化等の影響領域ごとに集約する方法)と被害算定型の方法(環境影響を人間健康や生態系に対する被害の程度として評価する方法)を実施した。分析結果に基づいて、統合的評価における環境影響の網羅性、統合化の程度と不確実性の関係、指標開発と意思決定支援の関係等を検討した。また、ヨーロッパにおける農業分野のLCA研究の動向を調査した。スイス連邦工科大学チューリッヒ校、スイス有機農業研究所、スイス連邦農業生態学および農業研究所、ボン大学有機農業研究所を訪問し、用いられている評価手法の内容や研究体制等について検討した。 2 環境負荷に関するデータ収集と環境影響評価 LCAにおける機能単位の定義が、評価結果(代替的な農業生産システムの望ましさの序列)にどのような影響を与えるかを明らかにするために、集約度(N施肥量)、収量、環境影響のデータを用い、それらの関係を検討した。単位面積当たり環境影響(二酸化炭素等価排出量)は、集約度(ha当たり窒素施肥量)が上昇するにつれて大きくなるのに対して、単位生産物当たり環境影響は、集約度が上昇するにつれて小さくなることが示された。さらに、施肥等の環境影響においては、製造過程に起因する間接的影響が大きいため、評価範囲(システム境界)の設定に重要な意味があることが確認された。
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