研究概要 |
持続可能な園芸生産システムの構築を意図して、農業と環境の相互作用の全体像を視野に入れた統合的評価手法の確立を試みた。本年度は、以下の研究を実施した。 1 園芸生産の統合的評価モデルとデータベースの構築 管理の集約度とその環境影響の関係を、集約度と収量の関係(収量関数)、ならびに集約度と環境影響の関係(影響関数)に分解するモデルを提示した。収量および影響関数が原点を通過するならば、望ましい農業生産のタイプ(集約的・高収量か粗放的・低収量か)は、収量および影響関数の形状に依存することが示された。また分析結果からは、集約的農業生産方法の環境影響の方が、粗放的生産方法よりも小さくなり得ることが示された。これは環境保全型農業の展開方向に関して新たな視点を提供するものである。さらに、以上のモデル構築の作業と平行して、園芸施設等に関するライフサイクルインベントリデータベースを作成した。 2 持続可能性評価のための統合的評価手法の比較検討 LCAを実際に適用する上で留意すべき2つの個所を示した。第1は,影響領域(地球温暖化等)や保護対象(人間の健康等)ごとにライフサイクル環境影響を評価する部分である。第2は、環境影響評価項目(影響領域や保護対象)を統合化するための多基準評価の部分である。前者については、環境影響を表わす単位(機能単位)の選択によって分析結果(複数の農業生産システム間の望ましさの順位)が異なり得ることが示された。後者については、経済的・社会的評価手法との統合を検討する場合に、より重要性を増すことが示された。また、地理情報システム(空間分析)に基づく作物モデル等の利用可能性も、影響評価手法の一環として検討した。さらに、エラスムス大学オランダトランジション研究所、ワーヘニンゲン大学農業経済研究所を訪問し、持続可能性評価やトランジションマネジメントに関する検討を行った。
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