研究課題
持続可能な園芸生産システムの構築を意図して、農業と環境の相互作用の全体像を視野に入れた統合的評価手法の確立を試みた。本年度は、前年度までに開発した統合的評価モデルを用いることによって、園芸生産システムがどのようにデザインできるかを検討した。まず、昨年度までに検討した環境影響を統合的に評価する方法を拡張し、経済性の最大化と環境影響の最小化の観点から、適切な管理水準(施肥や農薬散布の望ましい水準等)がどのように決定できるかを検討した。その結果、環境効率の考え方を用いて、単位生産物(あるいは単位所得)当たりの環境影響を最小化する方法と、経済性の最大化と環境影響の最小化を同時に考慮する多目的最適化を用いる方法があることが示された。両者の比較の結果、得られる解は両者の間で異なり得ること、後者の視点からみた場合、前者には暗黙裏の選好があると言えること、経済性と環境影響のトレードオフを理解するためには後者の方法が不可欠であること等が明らかとなった。さらに、システムデザインの観点から、ライフサイクル環境影響評価手法、ライフサイクルマネジメント等に検討を加え、政策立案等に関わる意思決定支援の可能性を検討した。その結果、農業環境問題のように評価対象が複雑である場合には、人間には初めから選好(価値判断)が備わっているのではなく、問題との相互作用の中で選好が構成されると考える構成的方法によってより妥当な意思決定支援が可能となるであろうことが示された。
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