研究概要 |
割高と批判される日本のコメ生産費を引き下げるためには,稲作農家の水田経営規模は数10ha以上,水田耕区面積は1枚少なくとも数ha以上の無畦畔巨大水田耕区として整備する必要がある。しかし,こうした巨大水田耕区には,湛水時に風波による苗の損傷の恐れがある,取水や地表水の排水に時間がかかる等,多くの懸念や批判が寄せられている。そこで,米国で近年造成された仮畦畔をいっさい作らない真平らな16〜64haの巨大区画水田でコメを作っている,アーカンソー州イズベル農場とカリフォルニア州国府田農場の実情を調査し,経営の実態や用排水稲に関わる巧妙な工夫を解明した。 調査の結果,いずれの農場でも,近年になって64,36,24,16haといった内部無畦畔巨大区画水田を創出していたことが明らかになった。用排水問題については,農地区画を囲む四方の道路や用排水路の堤防に接して,圃場を囲む仮設の溝を切る。この仮設水路は,灌概期には圃場に届いた用水路につなげて,横越流型の水路として圃場への給水路として使う一方,収穫前にコンバインの稼働に支障がないように地表を乾かしやすくするための排水にも利用されている。こうした工夫により必要な給水・排水時間は短縮され,かつ,灌概時の土壌浸食が避けられている。排水については,必要に応じて圃場の表面に数〜10cm程度の深さの溝を適当に切って,地表排水を助ける場合がある程度だった。また,強風時の風波による水稲の抜け上がりは,国府田農場では10年に一度一部の水田で起こるのみで,巨大区画のもたらす利益と比較すると問題にならないとのことだった。
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