研究概要 |
日本のコメ生産費を引き下げるためには,稲作農家の水田経営規模は数10ha以上,水田耕区面積は1枚少なくとも数ha以上の無畦畔巨大水田耕区として整備する必要がある。しかし,こうした巨大水田耕区には,湛水時に風波による苗の損傷の恐れがある,取水や地表水の排水に時間がかかる等,多くの懸念や批判が寄せられている。 そこで,豪州で近年造成された仮畦畔をいっさい作らない巨大区画水田でコメを作っている,ニューサウスウエルズ州の大規模農場の実情を調査した。 調査の結果,いずれの農場でも,近年になって従来の等高線沿いの畦畔を圃場整備して5ha程度の内部無畦畔巨大区画水田を創出していたことが明らかになった。昨年度調査を行った米国カリフォルニア州やアーカンソー州の農場と比較して区画規模は小さいが、これには、稲作の経営規模が100ha程度と小さく、5ha程度の区画でも耕作しきれること、それ以上区画規模を大きくすると、整地費用がかかって採算が合わなくなる恐れがあること、灌漑用水の制約から稲作面積が毎年制限されて田畑輪換が求められ、畑作の場合は排水性確保のため圃場内にある程度傾斜があることが望ましいこと、といった要因があった。しかし、5ha程度の区画であっても、それに附帯する圃場施設(用水路・排水路・農道)の密度は日本と比較して極めて小さく、これは圃場整備事業費の削減につながることから、今後の日本の大区画水田整備事業の改善方向が示唆された。
|