研究概要 |
参加型農村計画論における行動科学的アプローチの意義を確認した。今日の農村計画論の主流は,計画づくりを「問題を解決するための処方箋づくり」とみなし,目的・手段間のロジカルな整合性を追求する論理的アプローチである。しかし,住民主体型の計画づくりでは,論理的アプローチだけでは不十分である。なぜなら計画づくりの主体となる住民の意欲や社会的・心理的・組織的特性などの主体的特性が計画・実施の成否を大きく左右するからである。今年度は,これまで計画づくりを手がけてきた神戸市北区の里づくり(地域づくり)事例を対象にして,アンケート調査を実施した。そして,そのデータを解析して以下の点を明らかにした。 (1)計画づくりに対する住民の意欲が計画の成否を左右するする非常に重要な要因であること。 (2)このような住民の意欲水準は,住民の集落自治への関わり合い(コミットメント)の程度および計画づくりに対する理解の程度の両面から規定されていること。 (3)さらに,地域づくりの意欲水準は(および集落自治へのコミットメントの程度も),パーソナルな信頼尺度や一般的信頼尺度で計測された社会的信頼特性の水準に規定されていることがわかった。 (4)当然,計画づくりは合理的規範に従って策定されなければならない(論理的アプローチ)が,そういった論理的アプローチと同様に住民の意欲を如何に高めるかが重要であること,すなわち,行動科学的アプローチが重要であることを明らかにした。 上述のように,計画づくりの成否は住民の意欲に強く規定されているが,その背景には,社会的信頼の水準が影響していた。「社会的信頼」に「互酬性規範」と「社会的ネットワーク」を加えると,ソーシャル・キャピタル概念に一致する。そこで,地域づくりとソーシャル・キャピタルの関連性について新たにアンケート調査を実施した。ようやく調査票の回収が終わった段階なので,結果は次年度に報告したい。
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