研究概要 |
1 住民主体型計画論の理論的枠組みについて 参加型地区計画論の理論的枠組みを整序した。1970年代からこれまでの農村計画分野の研究動向を学会誌等の表題を分析することによって俯瞰した。続いて,地区レベルの計画論に焦点を絞り,これまでの展開を非参加型,住民参加型,住民主体型に分けて整理した。更に計画論を社会技術という視点から捉えて,住民主体型計画論の枠組みを明らかにした。最後にグローバル時代における地区計画論の今後の展開方向として,地域づくり型計画論の枠組みを展望した。 2 地域主体の特性と計画後の地域変容に関する実証的考察 地域主体の特性としてソーシャル・キャピタル(SCと略称)概念に注目した。兵庫県宍粟市山崎町において,(1)SC概念に代表される地域特性と(2)中山間直接支払制度による地域づくりのパフォーマンスとの関連性をアンケート調査とヒアリング調査により明らかにした。その結果,直接支払制度の運用パフォーマンスと社会的ネットワークや社会的信頼といったSCの構成概念との間には,明確な対応関係があることを明らかにした。このことは,同一の条件で制度が適用されても地域主体の特性によってその帰結が大きく異なることを意味している。また,帰結の差をもたらす地域特性としてSC概念が有効であることを示唆している。 3 住民意識のモニタリングを伴った参加型集落計画づくりと新たなワークショップ手法の開発 兵庫県淡路市一宮町東桃川集落を対象にして,ワークショップ(WS)を開催して参加型計画づくりを実践した。この集落活性化構想づくりでは,ゲーミング・シミュレーションの要素を取り入れた新しいワークショップ(RPRPゲーム)を開発し,試行した。また,同WSの参加者に対してアンケート調査を実施(住民意識のモニタリング)して新手法(RPRPゲーム)の住民意識への影響を把握し,その有効性を明らかにした。
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