「高齢農業者の活動の場の類型化による活動空間の整備課題の解明」を目的とし、生産活動、安全性、社会参加等の面から、地域農業者の高齢化に伴い生じる問題点を検討し、農村高齢者の活動の場の整備課題を明らかにする。このため、(1)農村高齢者の活動空間の類型化、(2)先行事例地区調査、(3)文献調査等を行った。 規範的類型として、職・住・遊の3空間を初期設定したが、(2)、(3)により、住・遊(公園等)については既往成果が参照可能と推定され、職(農業生産)空間を当初対象とし、生産活動局面を主に考慮し、圃場、農道、用排水路の各空間に分け活動空間類型とした。(2)等での知見により、この空間類型別に活動局面を考察し、以下のような整備の方向性を明らかにし、整備課題とした。 圃場 圃場作業は私的な生産活動であるのみならず、高齢者の健康維持や社会性を担保する上で重要となる。地域によっては高齢者産業化した農業における圃場基盤整備が課題となり、省力化・軽労化、安全性からの整備視点が指摘される。また、優良農地保全と多面的機能維持に加え、地域社会の存続面、社会活動面での役割を考慮した高齢者農業を多面的に位置づける必要がある。 農道 農道利用上の慣れや見込判断による事故等に加え、高齢者の身体機能低下(視野狭窄や反射的動作の鈍化など)に起因する事故の防止対策が必要となり、その対策整備面ではヒヤリ・ハット調査等の現場情報が基本となる。なお、集落周辺では散策等の農業目的外の通行利用者への安全配慮が求められる。 用排水路 水路周りでの、水管理操作、巡回点検や軽微な補修、水路敷除草等の作業面で安全性を確保し、作業の簡略化・省力化による軽労化のための整備や工夫を集積することが課題となる。また、高齢者作業の分担内容や頻度等を調整することや、親水等の多面的な利用がある場合にその利用者への安全配慮視点も重要となる。
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