研究初年度である平成16年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 (1)研究対象流域は積雪寒冷地帯である大倉ダム流域(宮城県、名取川水系)、豪雪地帯である刀利ダム流域(富山県、小矢部川水系)とし、融雪流出解析の確認を行った。 (2)地球温暖化シナリオとしては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第3回報告の気温上昇予測などを参考にしながら、気温上昇を1〜4℃まで1℃キザミに4つのシナリオとし、さらに気温1℃上昇することに降水量が2.5%ずつ増加するものと仮定した。なお、気温上昇、降水量増加の時期別変化は考慮せず一定とした。 (3)積雪融雪計算は修正degree-day法(研究代表者ら提案済み)、日々の流出量計算はタンクモデル法により行うとともに月別、旬別の集計も行った。 (4)大倉ダム流域では融雪最盛期の4月には約370mm(10か年平均)の総流出高が、気温1℃上昇する毎に34mm(約9%)ずつ減少し、刀利ダム流域では742mm(10か年平均)の総流出高が、気温1℃上昇する毎に82mm(約11%)ずつ減少すること、などが確認できた。 (5)気温1℃上昇あたりの減少割合は、安藤氏が多摩川水系の小河内ダム流域で試算した1.6%よりかなり大きな値となった。したがって、融雪期流量が大きい流域ほど地球温暖化の影響をうけることが確認できた。 (6)以上のように、融雪期の月別、旬別の総流出高は気温上昇により大きく変化することが確認できたが、河川流況の指標である最小流量、渇水量、低水量などの数値でみると、両ダム流域ともあまり大きな変化はみられなかった。これは降水量の増加を考慮したことによるものと推察される。 (7)なお、検証流域における積雪量、融雪量、融雪流出量については、現地で継続観測中である。
|