研究2年目の平成17年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 (1)研究対象流域である大倉ダム流域(名取川水系・宮城県)、刀利ダム流域(小矢部川水系・富山県)についての積雪・融雪計算過程における積雪水量の変化について標高地帯別(両流域とも第1〜第4地帯)に整理・グラフ化した。その結果、標高の高い地帯より、標高の低い地帯の方が地球温暖化(気温上昇)の影響をより大きく受けることが確認できた。 (2)各年のピーク時の総流出高と気温上昇に伴う総流出高の減少率との関係をみると、大倉ダム流域、刀利ダム流域とも総流出高の小さい年には減少率が大きくなる傾向がみられるが、統計的には有意性は認められなかった。 (3)地球温暖化が農業用水利用に及ぼす影響をみるため、気温上昇に伴う水稲の作付け時期の変化について、宮城県(仙台市)を例として検討した。仮に4℃気温上昇した場合、現行の「ひとめぼれ」などを5月上旬に移植(田植え)すると7月中旬に出穂(積算温度1700℃)し、登熟期(積算温度2700℃)に高温障害をうけることになる。そのため、移植時期の変更を余儀なくされるが、4月上旬に移植すると、7月上旬に出穂することとなり、やはり登熟期の高温障害が問題となる。6月上旬に移植すれば、出穂時期が8月中旬となり、登熟期の高温障害を避けることができる。しかし、最も農業用水を必要とする移植時期が6月ということで、月別にみると最も流出高(河川流量)の少ない時期となり、農業用水利用に大きな影響を与えることが予測され、融雪流出量のダム、溜池などによる貯留がより重要となることが示唆された。 (4)なお、検証流域(雫石川水系赤沢川流域)における積雪量、融雪量、融雪流出量等については、現地で継続観測中である。
|