研究概要 |
環境負荷の低減,あるいは将来を見据えた持続的農業のためには,精密農業という考えに基づくほ場の最適管理が必要とされる。このためには,作物生産の場であるほ場あるいは作物の状態の情報を的確に把握する必要がある。ほ場状態,とりわけ土壌の化学成分状態を評価するためには,実際に土壌を採取し,分析しなければならない。これまで,土壌の採取は手作業で行われてきたため,土壌状態を数値的に評価するまで多大な労力と時間が消費されてきた。 平成16年度に土壌のサンプリング作業の簡易化を目指し,土壌の自動連続サンプリングシステムの開発を行った。走行しながら連続的に土壌をサンプリングすることが可能で,作業走行速度1m/sが維持された。 土壌のサンプリング位置は,あらかじめプログラムされた位置にシステムが移動してきた時,GPSによる位置情報に基づいて認識される。平成17年度は,開発したシステムの土壌サンプリング位置の精度向上と,サンプリング土壌の量的な確保のための土壌搬送システムの制御についてチューニングを行った。また,土壌水分,pH,ECなどのリアルタイム計測の可能性について検討した。土壌サンプリング位置は,トラクタの実走行距離を車輪から計測し,GPSによる位置情報の補正データとして扱うことで,その位置精度の向上が図られた。本システムを利用して,試験ほ場の土壌を自動的にサンプリングし,土壌の化学成分(N,P,K,EC,pH)の分布マップを作成した。サンプリングした土壌に対して,土壌サンプリングシステム上での土壌水分,pH,ECのリアルタイム計測を試みたが,これらの計測時間を十分稼ぐことのできる機械的システム及び経路構成は,現在も検討中である。 以上,開発した土壌の自動連続サンプリングシステムで,土壌分析のための土壌採取時間の節約と,マップ化のための正確な土壌採取位置を把握することができた。
|