研究概要 |
山林傾斜地に山羊放牧区(林地内)と肉用牛放牧区(ススキ主体の野草地内)を設定し、放牧試験を行った。山羊放牧区においては5,500m2の圃場に平均体重42kgの成雄山羊2頭を6月上旬から11月下旬まで延べ131日間昼夜連続放牧させた。肉用牛放牧区には6,600m2の圃場に平均体重550kgの交雑種成雌牛2頭を5月上旬から7月下旬までの期間のうち休牧期間17日間をはさむ延べ53日間日中放牧させ、その後平均体重94kg交雑種育成雌仔牛5頭を8月下旬から10月下旬まで延べ72日間昼夜連続放牧させた。植物バイオマス・植生の変遷と家畜の採食行動・栄養状態・体重変化に関して調査を行い、以下の結果を得た。 1)山羊放牧区においては、6月に圃場内に52種の植物種を得た。植物種数は禁牧区に比較して放牧区は6月から10月にかけて減少し、平均被度および平均植生高も減少した。また全出現種数および全植物現存量に占める草本植物の割合は6月から10月にかけて減少した。山羊の体重は導入直後から1ヶ月間は20%減少し、血漿中遊離脂肪酸(NEFA)濃度は正常範囲を超えたが、その後体重は安定し、NEFA濃度も正常範囲内の値を示した。10月における採食植物種は11種で、最も多く採食していたのは常緑樹の葉であった。 2)肉用牛放牧区においては、5月には圃場内に26種の植物種を得た。放牧期間中、禁牧区に比較して放牧区の平均被度および平均植生高は減少した。ススキの被度と現存量は5月から8月にかけて増加した。その後、禁牧区のススキの被度と現存量は8月から10月にかけて変化しなかったが放牧区では大幅に減少した。成雌牛の体重は休牧前はやや減少(0.35kg/日減)したが、休牧後は増加(0.56kg/日増)し、育成雌仔牛の日増体量は0.38kgで、7月(成雌牛)および10月(育成雌仔牛)の採食植物種数はそれぞれ9種および14種で、最も多く採食していたのはススキの葉であった。
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