山羊および牛を適正な規模頭数で山林に導入することにより、家畜飼養と荒廃山林回復の双方を満たす土地利用モデル確立を目指した。荒廃山林の牧養力と荒廃森林の変遷を反芻家畜の採食行動・栄養状態と体重の変化、植生、植物バイオマスの指標により把握した。さらに交雑種育成雌仔牛を、放牧3シーズン目に野草主体の耕作放棄地に導入して繁殖共用し、成長と繁殖に関する成績を調査した。 1.ヤギ放牧区においては、禁牧区に比較して植物種数は6月から10月にかけて減少し、平均被度および平均植生高も減少した。また全出現種数および全植物現存量に占める草本植物の割合は6月から10月にかけて減少した。山羊の体重は導入直後から1ケ月間は20%減少し、血漿中遊離脂肪酸(NEFA)濃度は正常範囲を超えたが、その後体重は安定し、NEFA濃度も正常範囲内の値を示した。10月における採食植物種は11種で、最も多く採食していたのは常緑樹の葉であった。 2.ウシ(交雑種)放牧区においては、禁牧区に比較して平均被度および平均植生高は減少した。ススキの被度と現存量は5月から8月にかけて増加した。その後、禁牧区のススキの被度と現存量は8月から10月にかけて変化しなかったが放牧区では大幅に減少した。成雌牛の体重は休牧前はやや減少(0.35kg/日減)、休牧後は増加(0.56kg/日増)、育成雌仔牛の日増体量は0.38kgで、最も多く採食していたのはススキの葉であった。 3.放牧開始時の4月において一種の植物種を得た。体重は調査開始時が平均で318kg、終了時が424kg、放牧期間中に受胎確認(25.5ケ月齢、体重362kg)され、調査期間中の360日間の日増体量は0.39kgであった。
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